背中に回された手が優しくて。
これじゃあまるで、本当の婚約者みたいだよ……。
「悠里が、俺の本当の婚約者だったら良かったのに……」
え……?
「咲人…さん…?」
それはどういう……?
顔を上げた瞬間、目の前が真っ暗になって
「んっ……」
唇に何かが触れる。
八王子さん……!?
それは刹那な出来事。
その行為がキスだと気が付いたときには、唇は離されていた。
見上げると、愛おしそうな瞳で、私を見つめる八王子さんの姿。
どうして…キスなんか……。
「……帰ろうか」
何事もなかったように微笑むと、八王子さんは私の手を取って歩き出した。
友達の前で婚約者のフリをする。
それだけ。ただそれだけで、傍にいられればいいと思っていたのに。

