アフター7の婚約者サマ!?


「まさか…」


私の目の高さで見える佐田君の唇が、微かな笑みをたたえた。


”はちおうじさん?”


ドキンー…!

肩が大きく跳ね上がり、目の前が真っ白になる…。


佐田君は八王子さんの名前を声に出さなかった。

けれど…

彼が言ったのは、確かに八王子さんの名前だった。


「……っ」


うつむいて唇をかみしめながら、ギュッと胸に手を当てる。


私は否定しなかった。いや…否定できなかったんだ。

きっと…佐田君にはもう、気づかれてしまった。

私が八王子さんと何らかの関係を持っていることに。


「…わかった」


佐田君はうつむいたまま、フッと口元を緩ませる。


「変なこと聞いて悪かったな」


そう言っているうちに、ホームに電車が入ってきて、私達の髪を大きく揺らした。

私が乗る予定の電車。ドアが開き、人の出入りで錯綜するホーム。

「……」

それでも私達の間には気まずい沈黙が流れ、人の動きに反してお互い立ち尽くしているだけ。