冗談で言ったつもりだったんだろう…
「…っ」
佐田君からいつも笑顔が消え、顔を逸らされてしまった。
無言のまま前に立っているだけで。
「あ、あの。ごめん…佐田君」
弱々しい声で謝ると、佐田君はゆっくりと振り返り私を見下ろした。
「謝らなくていいからこっち見てくれない?」
「……」
交わった視線…。
彼の瞳は、氷りついたような冷酷さを持っていた。
「教えてよ。明日のデートの相手って俺の知ってる人?」
「……っ」
低い声で問いかけられ、一気に鼓動が速くなる。
「…会社の人?」
「…え…と」
いつもの佐田君じゃない…。
話し方も、見つめる瞳も、言ってることも、何もかもが怖く感じる…。
手足がガタガタと震えるなか、必死に思考を巡らせ答えを探す。
”ちがうよ”
と一言言えば済む話なのに、佐田君の鋭い瞳がその隙を与えてくれない。
その場しのぎの嘘じゃ許してもらえそうにない。

