真面目総長のお気に入り〜元姫の秘密〜

「啓介さんっ!」


「おう、どうかしたか?」


ノックもなしに入ってきた幹部の春田暎-haruta aki-。


問題はノックなしって言うところじゃない。


黒っぽい茶色の髪色をした暎は、何事にも冷静なやつだ。


なのに、ノックも忘れるくらい慌てている。


…何かあったのか?


「た、大変なことがっ!」


「…わかった、一回落ち着こうか?」


そう言うと、暎は手を胸に当て深呼吸をした。


お、落ち着いたみたいだな。


「暎が慌てるなんて珍しいな。何かあったのか?」


「つぅか、冷静じゃない暎って初めて見たわ」


お前は黙ってろ。


そんな意味を込めて遼を睨む。


どう見ても何かあったとしか思えない。


だから話を折るんじゃない。


それが伝わったのか、遼はソファーに深く座り、目を瞑った。


…聞き耳は立てているが。