最後に、この話をさせてほしい。



それは、あの薬で危篤状態になった時のことだった。


気が付くと、

私は暗い箱の中で一人になった。



暑くもなく、

寒くもなく、

痛みも

吐き気もなかった。


一人きりだった。


そこには誰もいなかった。


誰も。


家族どころか、


神様も

仏様も

誰もいなかった。


本当に、

本当に、

一人だった。



「私は一人だ」


箱の壁に寄りかかって、ただそう思った。