秘密の異端者 【番外編】~The repayment of favor~


鞄から、予め用意しておいた
ボイスレコーダーを出す

それを手に私は窓辺に立った

風に木が揺れるのが見えた

録音のボタンに指をかけ
私はソレを押す


「母さん。私は、親泣かせの親不幸者で、何一つ恩返しも出来なくて…。
それでも、母さんは沢山の愛情を惜しみ無くくれて…。
私は母さんに本当に救われた。
母さんが私の母さんじゃ無かったら、今の私は居ないと思う。
いつも私達のために気丈に振る舞って、泣き言一つ言わずに、生きる意味を見つけられなかった私に生きるということがどういう事か教えてくれた。
辛かったのは私だけじゃなかったよね。
気が付けなくてごめんなさい。

母さんはいつも私のやる事に口出ししなかった。
私のこと、信じてくれてたんだよね。
ありがとう。嬉しかった。

母さん。私はやっと自分で前を向いて歩ける様になったよ。
大切な友人達のお陰です。
だからもう、母さんも頑張りすぎないで。
苦しくなったら、今度は私が力になりたい。
家族だから…。

本当は顔見せに帰りたかったけど、都合がつかなくてこんな形になりました。
けど、また近いうちにそっちに顔出すから、その時は何か母さんの手料理が食べたいな。

最後になったけど、いつもありがとう。
母さんの娘で良かった。
これからもずっと、私の母さんでいてください。
それから、父さんにお酒は程々にする様にと伝えて下さい。

それではまた、近いうちに…」