秘密の異端者 【番外編】~The repayment of favor~


鞄から昨日買ったばかりの曲集を
引っ張り出すと椅子に座って
高さを合わせた

手始めに、あの時と同じ
『yesterday once more』のページを開く

軽く指を屈伸させて鍵盤に手を這わす

ゆっくりと流れる様に
柔らかいタッチで鍵盤を押した


「あははっ、ダメだ、全然指が動かない。なんだこれっ!」


一曲弾き終えて思わず
声を上げて笑った

イメージはちゃんとあるのに
自分の手じゃないみたいに動かない

もどかしい…

でも、久しぶりの感覚が気持ち良かった

続いて他の3曲も弾いてみる

やっぱり、指は昔のようには動かない


それでも不思議と心が軽い

今日入れてあと3日

出来ないはずが無いという自信が
何処からか溢れていた