私が着替えて慌てて玄関から出ようとしていると、後ろからお母さんに声をかけられた。

「ちょっと志帆!今日は早く帰ってきなさいよ?」

「え、何で!?今日は愛莉と画材探しにいくんだけど!?」

愛莉って私の部活の友達。

「何言ってるの。どーせ、画材探しにって言ったって遊んで帰ってくるだけでしょう?それに今日は家庭教師が来てくれる日よ?」


「…………………は?」

…カテーキョーシ?


「あら?言ってなかった?私の従姉妹の息子の再従兄弟の友達が凄く賢いんですって。だから、あんたのその頭をどうにかしてもらうためにその人に家庭教師を頼んだのよ。丁度バイト代が欲しいって言ってたらしいから、いいかなって。」

頼んだのよって…。
言ってしまえば赤の他人だろそれ。
会ったこともない人にそう簡単に金使うなよ…。


「ってか、知らないし!」

「あらそう。てか、志帆あんた絵だけで高校推薦とか夢見てるんじゃないでしょうね?」

あらそうって、おい……。

「あんたのその頭じゃどこの高校だっていけないわよ?」

それぐらい…。
「………分かってるけどさぁ〜」

「とりあえず!今日は早く帰ってきなさい!話はそれから!ほーら、20分過ぎてるわよ!」

「え、やばっ!!」

あまり気分の乗らないまま、私は自転車を漕ぎだした。


愛莉への謝罪の言葉も考えながら……。