『ピンポーン』

…………来た。

いい感じに仕上がってきたときに、奴はきた…。


「志帆〜っ!いらっしゃったわよー」

「…はーい。」

めんど…。

階段を降りると、そこにはニコニコとした母と後ろの玄関では家庭教師だろう人が立っていた。


母の隣からひょこっと顔を覗かせた私は唖然としてしまった。

「……………っ。」




「志帆?……あっ!私また言うの忘れちゃってた?先生が男性だって……やっぱり不味かったか「綺麗な顔……」……は?」

先生が男性だから唖然としたわけではない。

先生の顔を見て…唖然としたのだ。

短くて少し茶色がかった髪の毛。
女の人のような色白の顔。
縁の無い眼鏡の中で切れ上がった目。
その瞳は薄い灰色のようで。

【綺麗な顔】
その言葉しか出てこなかった。
こんな整った顔、初めて見た…。

その瞳に私は見つめられていた。

明らかに不機嫌そうな顔で。


けど、そんな顔も今の私には綺麗だと思う事しか出来なくて。



思わず出た言葉は、

「貴方の顔を描かせてください!!!」

………だった。