今日こそ声をかけよう。
 意を決して席を立ったのに、今日も友達に囲まれてる。引き返そうと思ったけど、これじゃいつまで経っても機会がない。

 初志貫徹!

 私は足音も鼻息も荒く彼の席に歩み寄った。周りの友達も彼も不思議そうに私を見る。

「私とつきあってください!」

 ちが〜う! もっとさりげなく声をかけて、普通に話をするようになって、一緒に登下校とか段階を経て……。

 私のラブラブ計画はもろくも崩れ去る。いや、最初のさりげなくの段階で頓挫してたけど。

 彼の友達がおもしろそうに彼に尋ねる。

「だってさ。どうするの?」

 彼は私を一瞥しただけで目を逸らした。

「興味ない」

 完全に崩れ去った。



 傷心を抱えたまま帰路につく。校門をくぐったところでビクリとなって足が止まった。
 門柱の陰に彼が立っていたのだ。

「あ、友達を待ってるの?」
「おまえを待ってたの」
「へ? 興味ないんじゃ……」

 思わず間抜けな声を漏らす私に、彼は少し不愉快そうに言う。

「オレより先に言うなよな。しかもあんなとこで」
「え、ごめん……」

 あれ? オレより先って……。
 私が少し考え込んでいると、彼は背を向けて歩き始めた。

「帰るぞ」
「あ、さよなら」

 背中に向かって手を振る。途端に彼がものすごい勢いで振り返った。

「バカ、一緒に帰るの!」
「あ、うん。でも興味ないんじゃ……」
「あいつらがいたからに決まってんだろ。悪かったって、チクチク責めんな」
「ごめん」

 なんだかよくわからないうちに、彼と並んで歩き始める。
 もしかして、彼も私が好きだったてことでいいのかな。
 そう思うと嬉しくてどきどきして、なんだかふわふわと浮かれてきて、調子に乗った私はまたしても段取りを間違えてしまった。

「ねぇ、手、繋いでいい?」
「だから! オレより先に言うなよ!」

 彼は真っ赤になって怒鳴りながら、私の手を握った。