彼は空気のようにつかみ所がない。幼稚園からのつき合いだが未だに色々予想外。
 今日もチラチラ舞い始めた雪に、空を見上げて突然叫ぶし。

「こらっ! 何月だと思ってるんだ!」

 こんな奴と一緒に登校していると、私が恥ずかしい。空気空気、こいつは空気。
 呪文を唱えた途端、彼が問いかけた。

「なぁ、おまえ寒くね?」
「別に、普通」
「鼻の頭、赤くなってるけど?」

 うるさいよ! 話しかけるな、空気!
 ぷいっと目を逸らしたら、いきなり彼が背中から抱きしめてきた。

「ちょっ! なんなの!?」
「オレは寒いから」

 やばい。空気なのにあったかくて心地よくって動けない。彼が耳元で意地悪く告げる。

「鼻だけじゃなくて顔全部真っ赤になってきた」
「うるさい……」

 私の精一杯の反撃を鼻で笑って、彼はさらにぎゅっと私を抱きしめた。

「オレ、すげー寒いから、もう少しこのままね」

 しかたない。あったかいのは嫌いじゃないし。