「今、赤ちゃんが俺に返事をくれたみたいだ。」

「そうね…」

母が優しく清人のぼんず頭を撫でると、その手のぬくもりが優しく、直に伝わってくる。


「さあさあ、清人も来年からは中学生よ?

夏休みだからといってお勉強を怠けては駄目よ?」

「分かってるって」

そう言いながらも清人の頭の中は

昆虫採取のことで一杯だ。


「きよちゃーん、遊ぼう?」

玄関のほうから聞こえる鈴の声

「鈴が来たから遊ばなきゃ。」

「仕方のない子ね、冷蔵庫にたくさん漬物を漬けてあるから

おやつ代わりに食べるといいわ。」


「裏の畑のトマトは?」

「お好きにしなさい」

「やった!」

飛び跳ねながら、玄関に行くと

鈴が虫取り網を片手に待っていた。


「きよちゃん遅いよ」

「悪い、悪い」