「しかしどういうことだ?おい。小春がこんなに強いなんて。なんの魔法がかけられた?」



「それ嫌味にしか聞こえないけど」



 彼が投げたタオルがちょうど良く顔に被さった。


 まだ息は整わない。



「まさか俺を負かそうとか考えてたのかよ?負けず嫌いは小春の専売特許だな。昔もぴーぴ泣きながらも立ち向かってた」



「勝てるかもって思ったのに。仁くんこそ何の魔法?ブランクがあるとは思えない!!」



「小春に負かされたらさすがに立ち直れないぞ。まだ小学生に負けたほうがショックは小さい」



「あ~悔しい!!今でもしっかり練習してるのに」



「いや、十分強いぞ。小春に敵うやつなんてそういないだろ?」



 私の強さを認めてはくれているようだ。


 大敗をした相手に、褒められるとは複雑だ。



「榊田君がいる。ほら?話したでしょ?道場を紹介してくれた人。仁くんと同じくらい強いの。手合わせするとこてんぱんにやられる。最近頼んでも拒否されるけど」



「それは小春の執念に恐れを為したんじゃないか?」



「『弱いから嫌だ』だよ!?いつか絶対のしてやる」



 私は寝転がりながら、拳を天井へ突き上げた。