「ここは、どういうお部屋なの?」



まるで洞窟の様なゴツゴツとした壁から、金色の薔薇の花が何本も顔を覗かせています。


その光で、暗い部屋は黄金の輝きに満ち、その真ん中には


底が見えない程のヒスイの波紋を湛える、深い深い井戸の様なモノがありました。



『その水は、いけません』


姫が近付こうとした時に、慌てる風もなく、猫が静かに姫に言いました。



『覗けばすべて、姫のこれまでのすべてが、映りますよ…』



「ねぇ、私、まだアナタの名前を聞いていなかったわ」



井戸から離れて、姫は問掛けます。