――血に狂うな。

フェオドールから忠告を受けてルカは何となく悟った。


(フェオの目的はこれだったのか…)


白魔の様子を伝えに来たとは口実。


(俺の様子を見に来たんだな。きっと)


小鳥のことを好きだと公言しているルカが彼女と二人きりで暴走していないか。

それが心配だったのだろう。


(小鳥の血を飲んでみたい欲求は……確かに強い。食事としてじゃなく小鳥の血を吸いたい。大好きだから…)


流しで食べ終わった食器を洗っている小鳥の背中をボンヤリ眺めながら、ルカは欲を抑えようと深呼吸。

まだ一度も吸ったことのない彼女の血。

いったい、どれ程甘美な味がするのだろうか。


(ダメだ考えちゃ…!考えるな!考えるな俺!)


欲しがり過ぎて理性を失ってはいけない。


――血に狂うな。



「きゃっ」


ガシャンと派手な音を立てて食器が割れた。

「小鳥!?」

手を滑らせた小鳥を心配して近寄るルカ。