色気を含んだ声に刺激され、小鳥の耳が熱を帯びる。
と、そこへムスッとした顔のルカが血のついた唇を袖で拭きながら現れた。
「フェオ、なに口説いてんだよ」
兄の肩を掴み、ベリッと小鳥から引きはがす。
「ったく。油断も隙もないし」
「だよなぁ。フェオはむっつりスケベだから」
失礼なことを言いつつカロンもキッチンへやって来た。
と、その時。
『キケンだよ!キケンだよ!』
突然カロンから機械音がした。
「ああ、忘れてた。小動物、ほい。これ」
カロンから手の平サイズのクマのぬいぐるみを渡される。
小鳥はキョトンとしながらそれを受け取った。
「ぬいぐるみ…?」
「それ、しゃべるから」
「へ?」
『コンニチハ!コンバンハ!オッハヨー!』
小鳥の手の中でクマのぬいぐるみが手足をパタパタさせる。
「あ、それ!俺が作ったやつじゃん」
「これを?ルカくんが?」
「うん。まあ…ぬいぐるみを、っていうか、この中に内蔵されてる機械の方だけど」
「ルカは機械オタクだからなー。機械のことならなんでもござれって感じ」
「オタクって言うな!」
カワイイもの好きなカロンが過去に一目惚れしてルカから強奪したクマのぬいぐるみロボット。
それを小鳥にと差し出して彼は言う。
「あげる。ルカと二人きりとか、暇だし退屈だろ?寂しくないよーに。な」
「ありがとうございます」
お礼を言ったところで傍観していたフェオドールが口を開いた。
「カロン。そろそろ地下に戻るぞ」
「えー、もう?」
まだまだ遊び足りない子供のような目をしているカロンを引っ張り、フェオドールは扉へ向かう。
それからチラリとルカを振り返り、一言。
「ルカ…血に狂うなよ」
軽く目を見開いたルカだったが、無言で兄の後ろ姿を見送った。