「わざわざ説明させるのか?昨日の言葉を繰り返せば満足か?」

「昨日の言葉…?」



――いずれ櫻井小鳥を支配し、人間との共存など幻想でしかありえないと教えてやろう



恐怖した台詞を思い出し小鳥が身震いしていると、隣で氷河がクスリと笑った。

「俺達の手中にお前が落ちたと知ったら、奴らはどんな顔をするんだろうな。想像するだけで楽しくて仕方がない」

「さ…最低…!です…」

「ふん。ゲスな種族である人間に言われたくないな」

会話しながら小鳥は周りをうかがった。

今二人がいるところは遊園地からだいぶ離れた閑静な住宅街。

とくに拘束されているわけではないため、逃げ出そうと思えば氷河から走って逃げることはできる。

しかし、道がわからない。


(どうしよう…。氷河さんから逃げられても迷子になったら意味ないよ…)


地下都市の地理がよくわかっていない小鳥には自力でクラヴィエ家に帰ることは無理だ。

だからといって、このまま大人しくついて行くのも嫌だ。


(うう……どうしよう!)


小鳥がもんもんと悩んでいた時だった。


「見えてきたぞ。あれが軍学校だ」

「え!」

顔を上げると、前方にあるアーチ型のゲートの先に、西洋の古い城塞を思わせるズッシリとした巨大な建物が見えた。