フェオドールは花が好きだ。

特に母親が気に入っていた薔薇が大好きだ。

「地下世界でも薔薇に囲まれてみたい!」という母親マリアンヌの半分冗談だった発言に刺激され薔薇研究を始めた彼だったが、いつの間にか本来の目標以上のことを仕出かしていた。

最近ハマっているのは、薔薇の香りによる様々な特殊効果。

幸福な気持ちになったり、眠くなったり、記憶がとんだり。

そして今、小鳥が嗅いだ赤薔薇の効果は「愛情の芽生え」。

この香りを嗅いだ時、目に映った相手を好きになるというものだ。

ゆえに小鳥はフェオドールに対して偽りの愛情を抱いてしまった――簡単に言えば恋してしまったことになる。

効果を消そうにも、どうにかする薬など開発していない。

そのため時が過ぎて効果が徐々に薄くなっていくのを待つしかなかった。