「あの、静理さん…?」

「何かな?」

「どこへ向かってるんでしょうか…?」

玄関を出て、閑静な住宅街を真っ直ぐ進む。

「駅へ。電車に乗るからね」

「電車があるんですか!?」

「うん。この下にレールが張り巡らされているんだよ」

そう言うと、静理は足で軽く地面を蹴った。

「地下に電車…。地下鉄ですね」

「乗り場は向こうにあるから」

彼が指差した方向へ道なりに歩いていると、五分もしない内に駅へと繋がる広い階段が現れた。

「わあ…本当だぁ」

驚く小鳥を見て静理は首を傾げる。

「前に白魔と買い出しへ行ったよね?その時に乗らなかったのかい?」

「はい。あの時は車を使いました」

「ああ…成る程ね」

階段を下りた先で二人分の切符を買いながら、静理が苦笑する。

「白魔は真正のお坊ちゃんだから、出掛ける時はほとんど車だったね」

駅の改札口を通り抜けてホームへ。

「静理さんはよく電車を使うんですか?」

「うん。白魔と違って俺は電車派だから」

人間が使う地下鉄のホームそっくりな景色を目にしながら電車を待つ。

すると、一分もせずに電車が滑り込んできた。

そこそこ混んでいるそれに二人が乗り込んだ直後、自動ドアがゆっくりと閉まった。