母親には何度も抱きしめられた。

それは泣きたくなる程の優しい記憶。

温かい思い出。


「そうか……あれから僕は…ずっと…」


寒かったのだ。

肩が寒くて、身体が冷たくて、心まで凍えた。

小鳥の持つ温もりが羨ましい。

分けてほしい。

否、強引に奪おうか。


そこまで考えて自嘲する。


(無理だ……今更)


きっと怖がって自分から手を伸ばすことなどできない。

無邪気だったあの頃とは違う。


もう――できない。



「……離れて」

「え?」

「いつまで抱き着いてるんだよ…!離れろよ!」


オーレリアンは無理矢理小鳥の身体を引きはがした。

「早く出てけ!」

急に突き放されて驚くも、小鳥は一言も喋らず素直にソファーから立ち上がる。

そのまま静かに歩き出そうとしたが――。


「あっ…!」

クラリときた。

足がふらつく。

身体の血が足りず、覚束ない足取りになる小鳥。

前に倒れそうになった時、後ろへ身体を引っ張られた。