カロンがコンピュータ室に入ると、そこには先客がいた。

後ろ手にドアを閉めて成る程と納得する。


「ふーん、犯人はルカか」


椅子に座ったまま不機嫌な表情でカロンを睨みつけるルカ。

「誤作動とか、おかしいと思った」

「もう止めといたから。それより、カロン」

「何?」

「……小鳥に手を出すな」

「なにそれ嫉妬?」

「違う!俺は…小鳥に傷ついてほしくないだけだ」

「へえー。だから自分が護るって?ナイト気取りか」

嘲りのこめられた眼差しで見下ろされる。

ルカは唇を噛んだ。


「……ああ、そうだよ。小鳥のためなら、ナイトにでも暗殺者にでも、なんでもなってやる」


「はっ……偽善者」


冷めた声が降る。


「あんたさ、小動物のこと好きなんだろ?なら、あんたはナイトになんかなれねーよ」

カロンは淡々と続けた。

「俺達に嫉妬して、狂って、小鳥を自分のものにしたくなる」

ルカの拳がピクリと反応し、震える。

「泣かれようが傷つけようが、どうでも良くなる」

「うるさいっ!!!!!そんなことない!!俺は…!」

勢いよく椅子から立ち上がって否定する弟に呆れ、カロンは溜息をついた。


「違うって?そう豪語する奴ほどやらかすんだよ」

「違う…俺はっ…!」

声を震わせながら、なお否定するルカにカロンは背を向けた。

「ならせいぜい気をつけな。あんたも俺達と同じ。欲望には忠実なんだからさ」


それだけ言うとカロンは静かに出て行った。




「………俺は……ちがう…」



今にも泣きそうな声は、誰にも伝わることなく空気に溶けた。