「白い、薔薇…?」
ゆっくりと小鳥に向かって一輪の白薔薇を差し出す。
「フェオの薔薇だよ。効果は…知ってるよね?」
効果は、記憶の消去。
「これを使って、君の嫌な記憶を消してあげる」
ルカの青い瞳が月明かりに狂気めいた輝きを見せる。
「い…いや…」
突然、目の前の相手が怖くなった。
知らず、一歩後ずさる。
「なんで逃げるの?大丈夫。嫌なことは全部忘れさせてあげるから」
ルカが一歩、小鳥に迫った。
「俺達といても、怯えないように…」
狂気的な瞳から、綺麗な雫がこぼれ落ちる。
「楽しい記憶だけあればいいでしょ?ねえ?小鳥…」
ゆっくりと獲物に迫りながら、ルカは泣いていた。
――ズキンッ
「っ…!」
小鳥の頭に痛みが走る。
彼らと出会ってから感じるようになったあの既視感がまたやって来た。
どんよりとした灰色の空。
真っ白な地面。
(あれは…雪?)
辺り一面、雪景色。



