EGOISTIC狂愛デジャ・ビュ



「着いたよ…」


ルカの手がそっと離れる。


風が頬を撫でた。

その時、違和感に気づく。


「風…?」


地下世界には、風がない。

たまに吹いてくる隙間風だって、もっと弱々しい。


恐る恐る上を見上げれば、夜空に、半月。


それは人工の空ではない。

紛れもなく本物の――。


「まさか、地上…?」


「うん……地上だよ」


目をこらして周りを見渡せば、月明かりに荒れた庭園が浮かび上がった。

どこかで見たような光景だと思い、よくよく思い出してみる。


(あ…!ここ、ホラー屋敷だ!)


ピンときて背後にある玄関をよく確かめてみると、記憶にあるホラー屋敷のドアと見事一致した。

エレベーターから降りて今まで、彼らは地上に建てられた例のホラー屋敷の内部を歩いていたのだ。


(でも、どうしてルカさんは、私を地上に…?)


小鳥の隣に立ったまま無言のルカ。

彼から話し出す様子がないので、小鳥は思い切って尋ねた。

「あの…どうして、地上に?」