十分後。
もう廊下には誰もいないだろう。
そう思って小鳥は恐る恐るドアを開けた。
先程まで啜り泣いていたので目が少し赤い。
喉もカラカラだ。
(お茶飲もう…)
人気のないことを確認してから、ふらふらとキッチンへ歩き出す。
が――。
「小鳥」
背後から聞こえた声。
誰もいなかったはずの廊下に、いつの間にかルカの姿があった。
「えっ!?ルカさん!?」
振り返って驚くと、いきなり手を掴まれた。
「来て」
真剣な表情。
短い言葉の後、ルカは小鳥の手を引き廊下をずんずん歩き出した。
「ちょっ!?どこに行くんですか!?」
尋ねるが、黙ったまま歩き続けるルカ。
二人は階段を下り、食堂前の廊下にやって来た。
食堂へ行くのかと思いきや、彼は食堂入口の真向かいにあるエレベーターの前で止まった。
(エレベーター?外に行くのかな?)
だが、このエレベーターはいつも外出する時に使う玄関ホールの物とは違う。
ルカの指輪で開かれたそれに乗り込んで、玄関ホールのよりも狭いことに気づいた。



