――カチャ
音がして、真正面のドアが開いた。
廊下に顔を出したのはその部屋の主――小鳥だ。
「小鳥…!」
「あっ…ルカさん」
「小鳥――」
呼びかけて歩み寄った瞬間、彼女はビクリと震えた。
蒼白になり強張る表情。
怯えた瞳。
恐怖の対象を見つめる眼差し。
「……っ」
自分達が彼女をこんな表情にさせているのか。
ルカの胸がズキリと痛んだ。
(やっぱり…俺達と小鳥は……)
一緒にいるべきではないのかもしれない。
怖いことはしないと言っておいて、十分に彼女を怯えさせている。
(何が……守るだっ)
傍にいて、小鳥の幸せを守ることが自分にできる唯一の償い。
けれど、傍にいることで彼女が不幸だと感じるならば――。
「小鳥…」
再び呼びかけると、小鳥は気まずそうに視線をそらして部屋に戻ってしまった。
唇を噛み、拳を握るルカ。
彼の決意は固まった。



