「君に背中を取られるほど落ちてないよ」
にこやかな笑みを浮かべつつ静理も愛用のムチを握った。
「ああ~もう!やめろよ二人とも!」
いつもこうだ。
兄弟喧嘩の仲裁役はたいていルカなのだ。
ルカが喧嘩を吹っかけるパターンは静理が止めに入る。
「物騒なもん仕舞えってば!静理のムチは当たったら痛いし、オーレリアンのウイルス注射はシャレになんないから!」
しかし、説得は無駄に終わった。
「悪いけど、ルカ」
「邪魔しないで。今ハンパなくイラツいてるから」
両者とも、かなりイライラしている様子だ。
ルカは内心溜息を吐きながら、このあと荒れるであろう居間から退散した。
パタンとドアを閉めてから真正面にある小鳥の部屋を見つめる。
(みんな気づいてんのかな…?)
小鳥に避けられるようになってから、兄弟全員の空気がピリピリしていることに。
「小鳥……出て来てくれよ…」
また顔が見たい。
できれば、笑顔がいい。
ルカがそんなことを考えていると…。



