必要最低限の生活費は出してくれるが、母親はそれ以外のお金を自分の服やオシャレのために使ってしまい、貯金もしない。

母親のことは嫌いじゃないが、あの浪費癖はどうにかして欲しいと小鳥は常々思っていた。

生活よりもオシャレが大事な母親を持ったせいで、今まで小鳥は安くて狭い貧乏アパート暮らしだったのだ。


「それは……父さんがいないから?」

「え?」

「片親しかいないから、辛い思いをしたの…?」


薄暗かった視界が開かれたドアによって急に明るくなった。

目の前に現れた広い廊下を歩きながら問われる。

ちらりと隣を見れば、ルカの清んだ青い瞳と視線が絡んだ。


「…辛くはないですよ。寂しいことは、あったけど…」

俯く小鳥に、ルカの胸がズキリと痛んだ。

彼の口は無意識に語っていた。


「もう、寂しくないよ。……俺が、傍に…」

「え?」

小さく聞こえたセリフにドキンと鼓動が反応する。

握られている手が熱い。

ルカを見ると、彼は顔を真っ赤にさせていた。