「白魔、やめなよ。ここ、人間居住区だよ?」

「小鳥には僕がいれば良いんだ。さっき、二人で孤独を埋め合うって約束したんだから」

キッと蜜莉を睨みつける白魔。

「はいはい…。大魔王は嫉妬深いね。束縛激しいと愛想尽かされちゃうよ?」

「うるさいっ」

刃が肌に食い込む――と思った瞬間、小鳥は意を決して振り返り、白魔にギュッと抱き着いた。


「白魔さん!」

「小鳥…?」


これには白魔も蜜莉も驚きを露わに目を見開く。

「大丈夫です!私、そ…そばに、いますから…。白魔さんの」


俯いている小鳥の表情は、抱き着かれている白魔にはわからなかった。

けれど――。


「小鳥…」


与えられたその言葉は白魔にとって、愛の告白以上に価値があり、心を揺さ振るものだった。


「僕のプリマドンナ――」


カランと音を立ててナイフが床に落ちた。

白魔もきつく抱きしめ返す。