演奏が終わり、小さく拍手を送る。
「良かったです!とってもステキでした!!」
「ありがとう…」
いつも無表情が多いフェオドールだが、今は嬉しそうに微笑んでいる。
小鳥が貴重なものを見つめていると、彼がポツリと呟いた。
「“星に願いを”か……。俺達は昼間の太陽を嫌うが…夜空の星なら見上げられる」
彼はフウッと息をこぼした。
「……いい曲だ」
星に願いを――。
彼ら闇人なら、夜空の星に何を願うのだろうか。
「でも、私達の曲を知ってるなんて、ちょっと意外でした」
「音楽に国境や種族は関係ないからな。人間が作った曲もちゃんとチェックしている」
「嬉しいです。私の好きな曲をフェオドールさんが知っていたなんて」
「………」
「フェオドールさん?どうしました…?」
なぜか沈黙して固まってしまったフェオドール。
急にどうしたのだろうと首を傾げ、清んだ青い瞳を見つめると――。
「……フェオでいい」
「え…?」
「フェオと呼んでくれ」
真剣な表情で小鳥の瞳を直視する。
控えめな口調だが、強い意思を感じさせる眼差しに小鳥は気圧された。
「わ、わかりました…。フェオ、さん」
「そう……それでいい」
満足そうな声にホッとする。
「さて、もう寝る時間だな。送ろう、マドモアゼル」