言ってる意味がわからず首を傾げるも、フェオドールは気にせず言葉を続けた。
「俺は一人が好きだ。一人になりたいからこの秘密の部屋を作ったんだが……最近は少し、寂しくて」
「寂しい…?なぜですか?」
尋ねると彼は真剣な表情で呟いた。
「こんな美しい花園なのに、見せびらかす相手がいない」
「……ああ……はい」
一人で薔薇に囲まれながらゆっくりと時間を過ごすのもいいが、自分が丹精こめて育てた薔薇を誰かに見て欲しいという欲求もある。
「兄弟は皆、花に興味がないし……かといって、他人をここに招くのも気が進まない。だから…」
フェオドールは小鳥の前まで優雅に歩み寄ると、自分の服の胸元に飾ってあった一輪の青薔薇を差し出した。
「他人だけど家族である君なら…いいかなと思った」
小鳥の手に渡った青薔薇が、その特有の濃い香りで彼女を包み込む。
(強い香りだけど……嫌いじゃない)
「たまに、来てくれ。酷く疲れた時とか……癒されるから」
「はい……」



