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 意識が覚醒した小鳥の目にまず映ったのは、最近与えられたばかりでまだ馴染みの薄い自分の部屋の天井だった。


「あれ…?私、なんで…」

身体は柩の中におさまり、ご丁寧に毛布がかけられている。

小鳥は起き上がるとボンヤリする頭を押さえた。


(そうだ…。白薔薇の香りで…)


何かを思い出しかけた。

けれど、もうわからなくなってしまった。

目が覚めると夢の出来事をハッキリ思い出せない――あの感覚に似ている。


と、その時、ノックもなしに部屋のドアが開いた。


「あ、起きた?」

カロンだった。

手には小鳥の食糧を入れたビニール袋を持っている。

「大丈夫か?今日はもう、これ食って寝ちまいな」

そう言ってビニール袋をテーブルの上に置いた。

「あの、すみません。私、倒れたんですよね…。ご迷惑おかけしました」

「ああ~……別に。気にすんな。軽かったし」

「え?」

「何でもない。こっちの話。じゃあな」


さっさと出て行ったカロン。

その背中を見送って軽い溜息をつくと、小鳥は一人食事をしてからシャワーを浴び、再び柩に身体を沈めた。