三十分、もしくは一時間くらいだっただろうか。
とにかく、小鳥にはエレベーターが止まるまでが酷く長く感じられた。
しかし、止まったのはいいが鳥籠の隙間から見える周りは壁。
壁に囲まれたままどうしようと戸惑っていると、エレベーターの降り口にあたる壁が左右に開いた。
そして、開かれた壁の先に小鳥がまず見たものは、部屋の光景ではなく人だった。
「あんた、一人で来たのか?勇気あるな」
「え?」
緑色の髪が特徴的な青年。
彼が誰なのかはわからないが、この屋敷に来てから初めて出会う人間に小鳥は大きく安堵した。
(良かった!やっと人に会えた…!)
「あの、初めまして。私は櫻井小鳥です。貴方は、カミジョウさんですか?」
礼儀正しく挨拶をしたらポカンとした表情をされた。
「カミジョウ?……ああ、そんな苗字だったっけ」
彼はエレベーターのドアを開けながら小鳥をジッと見つめた。
「俺はカミジョウじゃない。カロンだ」
「カロン、さん?」



