†††


 グァーッと不気味に烏が鳴いた。


「ねえ、本当に行くの?」


涼子は彼氏である孝介の腕を引き留めるようにギュッと掴んだ。


「行くに決まってんだろ?何のためにここまで来たんだよ」


二人の目の前には怪奇現象が起こることで有名な無人のホラー屋敷がある。


「でも、入ったら帰ってこれないって噂じゃない!しかもこの辺り…何人も行方不明者が出てるって言うし…」

「バーカ。だから面白いんじゃねーか。真実味あってよ」


なんでも、この洋館に立ち入った人間で帰ってきた者はいないとか。


「開けるぜ」


孝介は勇敢にも屋敷の門を押した。

その門には「memento mori」という言葉が刻まれている。

メメント・モリ。


――汝、死を覚悟せよ