「んじゃー今日も頑張っていきましょー」



大宮さんのゆるい挨拶が終わり本格的に仕事をし始めた。


優希さんに教わったおかげで仕事は着々とこなせた。


ビニール袋は苦手なようだが、それ以外はなんでも楽々こなすし、教え方もうまい。


さっきあんだけ笑ったが、この人は実はすごいと心の中ではわかってた。



この、パン屋で働こうと思ったキッカケも彼女だった。



このパン屋の前は俺の高校の通学路だった。この前を通る度、キラキラした笑顔を振りまく優希さんは眩しかった。



俺もあの人の隣に並びたいと思った。
だから、衝動でバイトに入ろうと思った。



すると、大宮さんが優希さんに向かって、




大宮「………優希ちゃん。今日は水曜日だよ。大丈夫…?」



心配そうに様子を伺っていた。

優希さんも少し気まずそうな顔をして


こくんと頷いていた。



不思議そうに思っていた俺を見かねて、大宮さんが寄ってきて



大宮「水曜日にはね、たくさんの行事?が待ってるの。まず一人目。」




大宮さんが時計を指さす。4時10分の5秒前。



大宮「ご、よん、さん、に、いち…」





リリリン♪




ぜろ、の掛け声と共にお客さんが来店した。




?「こんにちは。大宮さん!」




すらっとした長い脚。
顔はすごくイケメンで真面目そう。



青葉「あ…あの。イケメンさんがなにか問題でもあるんですか?」




聞こえないように小さな声でたずねた。




大宮「ううん。あの人はいい人。いっつもこの曜日のこの時間に来るの。あの近くにある会社の結構いい部署にいる。橋本勝利さん。」



店の後ろにあるおっきなビルを指さした。



青葉「あのっでっかい!?」

大宮「しぃー!!!」



びっくりして声が大きくなってしまった。
だってあの会社そーとー儲かってる……。



すると大宮さんがニヤニヤして橋本さんを指さした。


大宮「見てみて、優希ちゃんにぞっこんなの(笑)いっつも交わされてるけどね。(笑)」




確かに優希さんと楽しそうにおしゃべりをしていた。



大宮「いつもああやって、カフェスペースでこの時間は優希ちゃんとお茶タイムよ。」




この店は奥にカフェスペースもあって、少し席がある。






大宮「でも、優希ちゃんはいくら勝利さんでも無理だよ。ちゃんと好きな人がいるんだから。」








青葉「…………え?」