「あの…。あなたは誰ですか?」
「鶫ちゃん?何をいってるんだ?」
つ、鶫ちゃん?
「いえ、あたしは鶫って言う名前ではありません。人違いですよ。」
「人違い…だな。すまん、忘れてくれ。」
ガハハと豪快におじさんは笑った。
すると後ろから斎藤さんの声が聞こえた。
「鈴、まだなのか?」
「はい、どれも素敵で選べません。」
「鈴…。なら、違うか。まぁ、ええ。」
おじさんが1人で何やらブツブツ呟いているけど気にしなかった。
「そうか、なら俺が選ぼう。」
そう言って斎藤さんはあたりの髪紐を探した。
そして手にとりあたしに見せてきた。
「ほら、赤色の髪紐だ。お前は赤が似合う。」
「わぁ、素敵。ありがとうございます。」
「店主、これもらおう。」
「おおきに。それただでもらってくれんか?さっき、嬢ちゃんを人違いしてしまってな。その詫びだ。」
ってことでその紐はただでくれることになった。