後ろに目をやると鈴は懸命に涙を拭っていた。
「ここではないと思うが?平助あたりじゃないのか?」
「そうかもな…。邪魔しました。」
そう言って山崎さんは障子を閉め、元来た道へと引き返して行った。
「はぁ…。大丈夫か?鈴。」
「…あ。は、はい。もう、大丈夫です。ありがとうございます。」
「…なぁ、鈴。髪は長いが結ばないのか?」
「え、あー、そうですね。結びます。何か髪紐もってないですか?」
「すまん、俺が使っているものしかない。」
「そうですか…。」
萎れた花のように落ち込む鈴。
余程髪が邪魔なんだな、と俺は思いいいことを思いついた。
「なら、買いに行くか?」
「え?」
今日は仕事だったが、副長から今日一日鈴の事を見てやれと言われてる。
「髪紐。」
「いいんですか?で、でも、お金…」
「俺が出すから。お前持ってないんだろ
?」
「あ…そうでした。」
確か昨夜、こいつ髪飾り持ってた筈だよな。
山崎さんが持ってたが、こいつはそれを見ていきなり喚きだした。
それに何故か愛しそうに眺めていた。
チクリ
痛い。
俺、心臓おかしくなったのか?
何かが刺さったような痛みを感じた。
「斎藤さん?」
「い、いや。何でもない。髪飾りは持ってたよな?少し見せてくれないか?」
「え、あ、はい。どうぞ。」