ー"鶫"


何度も何度も聞こえるこの声



ズキズキ



痛い、痛い…



「鶫っ!」



山崎さんとは違う声が聞こえる



聞いたことのない声



けど、この声あたしは知ってる。



あたしは恐る恐る顔をあげた。



「鶫っ!」



そこにいたのは息を切らしていた男の人がいた。



目が合うとその人はあたしを立たせた。



「…誰ですか?」



「本当に記憶がないんだな…」



男の人は何かをつぶやいていたけど聞こえなかった。



「お前は誰だ?」



山崎さんはすかさずあたしとその人の間に割り込んだ。



山崎さんが割り込んで立っているから、その人のことが見えない。



「俺か?そいつの知り合いだ。だから、そいつを此方に返してくれないか?」



「…駄目だ。怪しい奴にはこいつを渡せない。こちらにもいろいろ事情があるのだからな。」



「そいつ…、鶫は俺の知り合いだと言っているだろう?」



やっぱりこの声知ってる。



ー"鶫、お腹空いてるならこのおむすびを食べるといい。"


"お、おむすび…?"



"こんなことも知らないのか?…まぁ、仕方ないか。いいか?おむすびはお米で作られていたもので…"


"お米…?"



"…とにかく食べてみろ。"



"…もぐ。あ、美味しい!これ、気に入ったの!"ー