そんな事を考えていると、リリがあたしの頬をなめて来た。


顔をあげると心配そうに首を傾げたリリがこちらを見ている。


「大丈夫だよ、リリ」


そう言い、リリの頭を撫でる。


いっそ川上君の事を諦めてしまおうか。


そうすれば亜耶との関係も、栞理と関係も壊れずにすむだろう。


あたしさえ、我慢していれば……。


そう思って立ち上がった時、草むらに血のあとが残っている事に気が付いた。


一瞬にしてここで亜耶を見かけたときの事を思いだす。


亜耶は自分じゃないと言っていたけれど……それじゃぁあの子は一体誰だったんだろう?


それに、あんな状態で大丈夫だったのかな?


血は完全に乾ききり、ほとんど消えてなくなってしまっている。


それとも、亜耶があたしには言えないような事を隠しているんだろうか?


そう思い、拳を握りしめる。


信じよう。


信じたいと思うたび、いろいろな部分で亜耶の裏側を探ってしまう自分がいる。


「……行こう、リリ」


あたしは力なくそう言い、リリと一緒に歩き出したのだった。