「本当に見たくないの? 2人は影から菜月の事を笑っていたかもしれないのに?」


その言葉に心臓がビクンッと跳ねるのがわかった。


2人は影から笑っていた?


そんな事ない。


絶対に、そんな事はあり得ない。


そう思うけれど、あたしを脳裏には亜耶の顔が浮かんでいた。


川上君に声をかけるように言ったのは亜耶だ。


あたしの片想いを応援してくれている。


だけどそれは全部あたしへの罠で、川上君と2人で笑っていたら?


あたしが川上君に不釣り合いなのは、自分が一番よく知っている。


それなのに頑張っちゃってと、笑っていたら?


ジワリと手に汗が滲んでくる。


鼓動は早く、一刻もここから立ち去りたかった。


だけど……栞理のスマホから視線を外すことができない。


足も、一歩も動かなかった。


栞理がスマホを操作し写真を表示させる。


そしてあたしはそれを……見てしまった。


写真の日付は昨日の午後4時。


制服姿の亜耶と川上君が2人でソフトクリームを食べながら歩いている。


それは誰がどう見てもカップルの光景で、しかもものすごくお似合いで……。


気が付けば、あたしはその場から走りだしていた。


写真から逃げるように、走ればさっきみたものを忘れられるかのように……。