「菜月、怖いの?」


亜耶に言われてあたしは返事に詰まった。


「あたしを救ってくれたのは菜月だったのに?」


その言葉にあたしは亜耶と一緒になってイジメられていた日々を思い出していた。


あの時はとにかく亜耶を守りたくて、亜耶と仲良くなりたくてあたしは何も考えずに行動していたんだ。


でも、今回は違う。


自分の気持ちさえ押し込めてしまえば、平穏でいられるのだ。


だから、声をかける勇気が出ない。


「菜月がイジメられたら、あたしも一緒にイジメられてあげるよ」


亜耶がニコッと笑ってそう言った。


「菜月があたしにしてくれたように、あたしは菜月のそばにいる」


「亜耶……」


あたしは亜耶の青い瞳に吸い込まれそうになる。


亜耶の言葉はまるで呪文のようで、そして麻薬のように体の中まで侵入してくるようだった。


体の奥がジンジンと熱くなり、何も怖いものなんてなくなっていくのがわかる。
亜耶はとても不思議な子だ。


男女問わず人惹きつけているのは、きっとこの容姿のせいだけじゃない。