「大丈夫だよ……」


力なくそう返事をする。


一目ぼれした人が王子様すぎて近づけない。


ただそれだけだ。


気持ちを伝えて振られたわけでもないし、嫌われているわけでもない。


それでも、相手の存在が遠く感じられてしまって自然と元気はなくなっていく。


昨日なんて家に帰ってからリリに恋愛相談してしまったくらいだ。


「最近川上君も学校に慣れて、校内案内も必要なくなっちゃったしね」

「そうなんだよね……」


だから、校内案内をしていた時のように至近距離で会話をすることもなくなってしまった。


今は栞理と会話をしている時間の方がずっと多いみたいだ。


あたしは見たくないと思いながら、横目でチラリと川上君の様子を見てしまった。


女子生徒に囲まれていても、嫌な顔一つせずにほほ笑んでいる川上君。


好きな子はいないって言っていたけれど、ああいうのは悪い気しないのかなぁ……。


『迷惑だから』と言って振り払ってほしいな。


なんて、我儘な気持ちが浮かんでくる。