お腹がいっぱいになった後の午後の授業は、ほとんど耳に入ってこなかった。


英語の先生が教えてくれる単語が心地よい子守唄に聞こえてくる。


思わず何度かうつらうつらしていた時、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴ってあたしは目を覚ました。


「菜月、帰ろう」


カバンを持った亜耶がすぐに近づいてくる。


今日は掃除当番じゃないから、このまま帰る事が出来る。


「うん」


あたしは慌てて自分のカバンに教科書を詰める。


その時だった。


カバンを肩にかけた川上君があたしの席へと近づいてきたのだ。


「校内案内、今日もお願いできるかな?」


そう聞いてくる川上君に、顔がカッと熱くなるのを感じた。