川上君の顔を思いだすと同時に、今朝栞理に釘を刺された事を思いだし、急に気分が暗くなった。


「菜月?」


そんなあたしを、亜耶は見逃さない。


一瞬、あたしは亜耶に今朝の事を相談しようかと思った。


亜耶は川上君に興味を持っていないようだし、きっとあたしの応援をしてくれるだろう。


「あのね……」


「なに?」


「……なんでもない」


あたしは言いかけた言葉を飲みこんだ。


亜耶は昨日また告白を断った。


栞理の言葉を真に受けているわけじゃないけれど、同姓が好きだと言う可能性はゼロじゃない気がした。


あたしが亜耶に恋愛相談をすることで、亜耶は心の奥で傷ついてしまうんじゃないか?


そんな考えがよぎったのだ。


「菜月、大丈夫?」


「うん。大丈夫!」


あたしはニコッと微笑み、残りのお弁当を食べたのだった。