人ごみの中聞こえた、あたしを呼ぶ声。


……なんで?


そう思いながら、あたしは立ち止まった。


振り向くと川上君が笑顔で近づいてくるのが見える。


その隣に栞理の姿はない。


まさか、栞理をおいてけぼりにしてしまったんだろうか?


あたしは一瞬にして焦りを覚えた。


栞理を置いてあたしの方へ来たとなると、栞理にどんな顔をされるかわからない。


偶然ここに来ただけなのに、ストーカー呼ばわりされるかもしれない。


その時だった、亜耶が「あ、こんなところにいたんだぁ」と、川上君に声をかけたのだ。


そうだ。


今はあたし1人じゃない。


亜耶が一緒だ。


この状況なら栞理も誤解しないだろう。


そう思い、胸をなで下ろす。