川上君や亜耶は自意識が薄いのだと思っていたけれど、そうでもないのかもしれない。


現に、『そんなことはあり得ないよ』と言った川上君は、亜耶が告白されに行ったというのに、ほほ笑みを浮かべている。


「亜耶は……」


言いかけて、やめた。


川上君が不思議そうな顔をする中、あたしは何も言わずに自分の席へと戻った。


亜耶はどんな相手の告白も受け入れないよ。


だから、川上君だって振られるんじゃないかな?


そんな事を言いそうになった自分が嫌だった。


亜耶がいない時にそんな事を言うなんて、やっていることは栞理とほとんど変わらない。


あたしは小さく息を吐き出し、そして教科書を取り出したのだった。