「家……上がっていく?」


自然とそんな言葉を言ってしまい、自分自身が驚いている。


「いいの?」


「うん。せっかく来てくれたし、それに遊べなかったし」


「ありがとう」


遊べなくなったのはあたしの都合だったのに、川上君は嬉しそうにほほ笑んだ。


どうやったらこんなに真っ直ぐな人間になれるんだろう。


川上君を家に招き入れながら、あたしはそんな事を思った。


川上君も亜耶も、人の悪口や人の弱味を口にすることがない。


誰とも競わず、誰とも比べずに生きている。


集団生活の中で生きていると、そういう事がだんだんできなくなっていく。


テストや体育祭と言った順位をつけなければならない場面以外でも、どうでもいいことでも、順位を気にしてしまう。


あの子の方が可愛いから。


あの子より背が高いから。


あの子に比べればあたしの方が。


そんな、小さな事すべてが気になってしまう。