いつの間にか降り出していた雨に濡れながら透は車に向かった。
残り5分でメールが一斉に送信される。
少しでも遠く離れよう。
透は車に乗り込むとエンジンをかけた。
車のヘッドライトを点けたとたん、フロントガラスにもう一人の透がボンネットの上に胡座をかいて現れた。
『何処行くんだ?』
「お前には関係ない。」
透は荒々しくアクセルを踏んだ。
勢いよく車が発進した。
『急発進は危ないだろ。』
今度は後部座席に居るのかバックミラーに姿を移した。
透は完全に無視をした。
透の目には景色がまた元に戻っていた。
舞と来た道なのに、青々と緑が生い茂っていた木々達は灰色で埋め尽くされていた。
『なぁ透…お前…死ぬのか?』
「今までずっと一緒に居たよな…僕が作り出した、もう一人の僕。もう消えていいよ。」
『そっか…俺はもう要らないのか…。』
いつから、こいつが傍に居たのか今はもう思い出せない。
イジメに遭っていた時には、既に居た気もする。
助手席に置かれた携帯電話のディスプレイが眩しい程に光り着信を知らせる。
『舞からだぞ…出ないのか?』
透は一瞥もせず真っ暗に続く山道を走り続けた。
ディスプレイは消えては点いてを繰り返す。
アラームが鳴る。
一斉に送信された事を知らせるアラーム。
舞からの電話が途絶えた。
きっとメールを確認してるんだと透は思った。
すぐに今度は五十嵐さんから着信が入った。
透はハンドルを右手で操作しながら電話に出た。
「深海か!?」
黙ったまま携帯を耳に押し当てた。
「深海っメールどういう事やねん!?お前が兄貴を刺した奴って何や!?おいっ聞いてんのか!!」
聞こえてくる五十嵐の声が震えてる。
「今舞に電話したんやけど、お前何処にいるんや?!」
「メールに書いたのは本当です。もう皆さんの前には現れません。」
「…っ!!お前…死ぬつもりか?そうなんやな?!そんな事俺は許さんぞ!死んで、はい、おしまいってわけにはいかんのや!そんな事しても兄貴は帰ってこーへん!舞もそんな事望んでないやろ?!俺もそんな事望んでないぞ!お前は可愛い部下や。俺はお前が好きや。兄貴を殺したって事実があっても、それは変わらん!!」
目の前が滲んで行く。
「五十嵐さん…ありがとうございました。お元気で。」
「ちょっと待っ…」
五十嵐の言葉を遮る様に電話を切った。
自分を思い止まらせるつもりで言ったのかもしれない、本気で言ったかもしれない。
「可愛い部下や。俺はお前が好きや。」
それだけで十分だった。
こんな幸せな事はない。
なんの後悔も、この世に未練もない。
もっと早くこうしとけばよかったんだ。
あの雨の日、刺して殺してしまったあの日、自分も刺して殺してしまえばよかったんだ。
ただ生に貪欲にしがみつき生きたいと願った。
なのに今は生きて行く理由がない。
死に対して全くの恐怖もなにもない。
舞を失うのなら、自分を消す。
舞が僕を殺すなら、僕は僕自身を殺る。
だから僕は死ぬんだ。
「いつまで、そこに居るんだよ。」
『俺?そりゃ最期までだな。』
ニヤッと笑って見せた。
「えっ??」
『俺ぐらいは最期まで居てやるよ。一人は淋しいだろ。』
「そうだな…ありがとう。」
目の前に見えて来た真っ白なガードレールに透は何の迷いもなくアクセルを踏み込んだ。
暗闇の中、ガードレールを突き破り透を乗せた車は宙を舞った。
勢いはすぐに失速し漆黒の海へと堕ちて行った。
スローモーションの様に閉じた瞼の裏に幾つもの舞が映った。
どの舞も自分に向けられた笑顔が真っ直ぐに愛を伝えてる様に思えた。
「舞…。」
大きな衝撃音と共に透の意識はそこで途切れた。
残り5分でメールが一斉に送信される。
少しでも遠く離れよう。
透は車に乗り込むとエンジンをかけた。
車のヘッドライトを点けたとたん、フロントガラスにもう一人の透がボンネットの上に胡座をかいて現れた。
『何処行くんだ?』
「お前には関係ない。」
透は荒々しくアクセルを踏んだ。
勢いよく車が発進した。
『急発進は危ないだろ。』
今度は後部座席に居るのかバックミラーに姿を移した。
透は完全に無視をした。
透の目には景色がまた元に戻っていた。
舞と来た道なのに、青々と緑が生い茂っていた木々達は灰色で埋め尽くされていた。
『なぁ透…お前…死ぬのか?』
「今までずっと一緒に居たよな…僕が作り出した、もう一人の僕。もう消えていいよ。」
『そっか…俺はもう要らないのか…。』
いつから、こいつが傍に居たのか今はもう思い出せない。
イジメに遭っていた時には、既に居た気もする。
助手席に置かれた携帯電話のディスプレイが眩しい程に光り着信を知らせる。
『舞からだぞ…出ないのか?』
透は一瞥もせず真っ暗に続く山道を走り続けた。
ディスプレイは消えては点いてを繰り返す。
アラームが鳴る。
一斉に送信された事を知らせるアラーム。
舞からの電話が途絶えた。
きっとメールを確認してるんだと透は思った。
すぐに今度は五十嵐さんから着信が入った。
透はハンドルを右手で操作しながら電話に出た。
「深海か!?」
黙ったまま携帯を耳に押し当てた。
「深海っメールどういう事やねん!?お前が兄貴を刺した奴って何や!?おいっ聞いてんのか!!」
聞こえてくる五十嵐の声が震えてる。
「今舞に電話したんやけど、お前何処にいるんや?!」
「メールに書いたのは本当です。もう皆さんの前には現れません。」
「…っ!!お前…死ぬつもりか?そうなんやな?!そんな事俺は許さんぞ!死んで、はい、おしまいってわけにはいかんのや!そんな事しても兄貴は帰ってこーへん!舞もそんな事望んでないやろ?!俺もそんな事望んでないぞ!お前は可愛い部下や。俺はお前が好きや。兄貴を殺したって事実があっても、それは変わらん!!」
目の前が滲んで行く。
「五十嵐さん…ありがとうございました。お元気で。」
「ちょっと待っ…」
五十嵐の言葉を遮る様に電話を切った。
自分を思い止まらせるつもりで言ったのかもしれない、本気で言ったかもしれない。
「可愛い部下や。俺はお前が好きや。」
それだけで十分だった。
こんな幸せな事はない。
なんの後悔も、この世に未練もない。
もっと早くこうしとけばよかったんだ。
あの雨の日、刺して殺してしまったあの日、自分も刺して殺してしまえばよかったんだ。
ただ生に貪欲にしがみつき生きたいと願った。
なのに今は生きて行く理由がない。
死に対して全くの恐怖もなにもない。
舞を失うのなら、自分を消す。
舞が僕を殺すなら、僕は僕自身を殺る。
だから僕は死ぬんだ。
「いつまで、そこに居るんだよ。」
『俺?そりゃ最期までだな。』
ニヤッと笑って見せた。
「えっ??」
『俺ぐらいは最期まで居てやるよ。一人は淋しいだろ。』
「そうだな…ありがとう。」
目の前に見えて来た真っ白なガードレールに透は何の迷いもなくアクセルを踏み込んだ。
暗闇の中、ガードレールを突き破り透を乗せた車は宙を舞った。
勢いはすぐに失速し漆黒の海へと堕ちて行った。
スローモーションの様に閉じた瞼の裏に幾つもの舞が映った。
どの舞も自分に向けられた笑顔が真っ直ぐに愛を伝えてる様に思えた。
「舞…。」
大きな衝撃音と共に透の意識はそこで途切れた。


