行き先は決まった。
海沿いにあるペンションで少し歩けば断崖がある。
そこから落とせば死体は見つからない。
ネットで調べたら有名な自殺の名所になっていた。
あの男にはぴったりの場所だと思った。
お父さんと同じ苦痛を味あわせて奈落に突き落とす。
必ず、この手で……。


舞は透の前では、変わらず笑顔で過ごした。
「旅行楽しみ」だとか「旅行先では何処に行きたい」とか、透に不信感を持たれない様に話をした。
けれどそれは舞の中にある少しの不安と、迷いを無くす為でもあった。
けれど、そんな舞を透が気付かないわけがなかった。
何処となくおかしい。
それが何なのかはわからないが、いつもの舞と違うことだけはわかっていた。
旅行に向けて透は毎日仕事を詰め込んだ。
休みをくれた五十嵐さんの負担になる事は避けたっかったからだ。
頑張った甲斐があったのか、休み前日にはひと段落つける事ができた。
その日は定時に終わる事が出来足早に家路に着いた。
家に着くと舞が明日からの旅行の用意していた。
「ただいま。」
鞄に荷物を入れながら一瞥して、おかえりなさい。と言った。
「ごめんね。全部用意お願いして…。」
「ううん。いいの、気にしないで。こうゆうの好きだし…。」
「いよいよ明日か。」
「うん。運転頑張ってね。」
「まかせなさい!」
色々考えたが電車より車の方が便利だと思った。


いよいよ明日。
明日は最後の日を過ごして決行は明後日の早朝。
散歩と言って誘い出し、一気に背中を押せばいい。
その後昼になっても帰って来ない彼を心配して通報すればいい。
理由なんて、いくらでもある。
告白をした彼は少し一人になりたいと言って出掛けたけれど、帰りが遅く心配になったと言えばいい。
後悔なんてない。
愛した人の命より、お父さんを奪われた悲しみの方が何倍も大きい。
だから、私は深海 透を殺さなくてはいけない。