一緒に居れば…一緒に住めばいつか隙が出来る。
いつかチャンスがあると思っていた。
それがこんなに早くチャンスがくるなんて思ってもみなかった。
しかも透さんから…。
これはお父さんがくれたチャンス?!
透さんは何も疑わず私と一緒に居る。
私を愛している。
自分が殺した相手の娘と…。
私は香椎 舞。でもこれは戸籍上。
今でも私は五十嵐 舞を忘れていない。
透さんがお父さんを殺した犯人だと知った、あの日、何もかもゼロになった。
それまでの愛おしさも、好きという気持ちもなにもかもゼロにした。
私とお母さんと産まれてくるはずだった私の兄弟。
地獄に突き落とした相手を許して、ましてや愛し合うなんて出来るわけない。
死んだお父さんがうかばれない。
透さんを愛している。
あの時思った想いに嘘偽りはない。
けれど、この想いを通せばお母さんも叔父さんも不幸になる。
だから、私は自分の想いより復讐を選んだ。
それが私がするべき事だと思った。
残り5日。
復讐の計画を作り上げなくてはいけない。
この二週間、透さんと色んな話をした。
もし今透さんが忽然と姿を消しても透さんの両親が探すことはない。
家を出て7年、両親とは音信不通で現在住んでいる場所さえも知らないと言っていた。
困るのは叔父さんぐらい。
それも、真実を言って逃げたことにすればいい。
私は悲劇の彼女を演じればいい。
正体を知らずに付き合い、真実を知って地獄に突き落とされた悲劇の彼女を…。
なるべく人が少なくて、二人っきりでいれる場所を探さなくてはいけない。
何よりも、殺し方を決めなくては…。

舞は自分の隣で深く眠りに就く透の顔を見つめた。
その寝顔にそっと触れた。
微かに声を出し透は寝返りを打ち舞に背中を向けた。
その背中に手を当てた。
掌にトクントクンと透の鼓動が伝わる。
舞はこの鼓動を止めることを再度決意して、静かに頬を伝った涙を拭った。