急に飛び出した舞を心配していた母親は何度も外に出ては帰りを待っていた。
家の電話が鳴り、急いで家に戻ると受話器を上げた。
話し終え受話器を置いた母親は胸を撫で下ろした。
最近娘の様子がおかしいことに困っていたから。
けれど、深海さんの所に泊まると言った電話での舞の声は優しく幸せに満ちてる声色をしていた。
舞は透の携帯を借りて母親と叔父さんに電話をかけた。
かけ終えて携帯をカウンターに置くとソファーに座る透の隣に座り、透の身体に身を預けた。
「お母さん…なんて?」
「どうぞって。明日から夏休みだからって不良にならないでねって。」
舞は母親の冗談を笑いながら透に伝えた。
「舞…もう一度確認していい?」
「うん。」
舞は体を起こし透に向き直った。
「本当にいいんだよね?僕は君のお父さんの命を奪った男だ。それでも、僕を愛せる?」
透にとって他人を愛する事は最近まで未知の事だった。
それなのに、それに加えて殺人者…しかも肉親を殺した相手を愛するなんて…。
舞は震える透の手を包み込む様に掴んだ。
「透さん、嘘偽りなく私は貴方を愛してる。だから、もう聞かないで。」
「わかった…。」
舞の言葉で透は安堵の表情を見せた。
舞は透に近付きキスをした。
二人は何度も唇を重ねた。
確かめ合う様に何度も…。
そのまま二人は抱き合った。
それは確かめ合うよりも、深め合う様だった。
透の世界がみるみる色付く。
すっかり元に戻った透の目に映る舞は一際綺麗に感じた。
透はサイドに置かれたタオルケットを取ると舞の体に掛けた。
ソファーで二人横になるには狭く舞はその身体の殆どを透の上に横たえていた。
「重くない?」
「何が?…あぁ舞がって?全然重くないよ。一応僕は男だし、なんてことない。」
「そっか。」
「うん。」
二人は暫く黙って天井を見上げていた。
不意に舞が話し出した。
「私ね…思ったんだけどね…お父さんが会わせてくれたのかなって…。」
「えっ?」
「勝手かもしれないけど、お父さんが透さんに会わせてくれたんじゃないかなって…そうじゃなきゃこんな事有り得ないでしょ!?」
そう言って舞はふふっと笑った。
「そうなのかな…。」
「絶対そう!そう思うことにしたの!」
また舞は笑った。
「透さん…またシャツ貸して欲しい。」
「あぁ。あっそうだ、明日買い物行かない?。」
透はシャツを取り出し舞に渡した。
「買い物?」
「うん、この部屋で舞が過ごしやすい物買いに行こう。」
「いいの?」
「うん。」
舞は飛び起きた。
「じゃ部屋着と…あとはシャンプーとコンディショナーでしょ…あとドライヤーと…。」
「ドライヤー?」
「うん、透さんは拭くだけだけど、私はこの長さだよ!?」
そう言って舞は髪をなびかせた。
「で、マグカップとお箸と茶碗。あとはね…。」
「そんなにあるの?」
「あるよ!ちゃんとバイト代貯めてるもん!」
「そうじゃなくて、買う物。それに僕が買うから心配しないで。」
「ダメ!ちゃんと自分で買う!」
「でも僕が言い出した事だし…。」
「いいのいいの♪」
舞は嬉しそうに部屋中を歩き回った。
そんな舞を見て透は自然と舞に話しかけた。
「舞…一緒に暮らさないか?」
「えっ??」
急に言ってしまった自分に驚き透は慌てた。
あまりにも急な申し出をしてしまった事に後悔が押し寄せてくる。
「本当に??」
「いや、何が何でも急すぎるよな…ごめん。忘れて。」
「本気だったの?」
「いや…あっ嫌じゃなくて…その…。」
「透さん!?」
「本気だよ。本当に本気でそう思った。舞と一緒に住めたらいいなって。」
「わかった。じゃそうする。」
「えっ??でもそんな…。」
「もちろん、ずっとってわけにはいかないけど、ほら、私まだ学生だし、学校あるし。でも夏休みだけならいいかなって。明日お母さんに言ってみる。」
「じゃ僕も一緒に行くよ。」
「電話で聞こうかなって思ったんだけど…。」
「駄目だよ。ちゃんと会って許可貰わないと。」
「…わかった。」
舞は少し笑った。
透のこういった真面目な所も好きなんだと思えた。
「先にシャワー浴びるけど…?」
そう言って透は廊下に続くドアを開けた。
「うん。」
「一緒に入る?」
透は悪戯っぽく言った。
「もう…バカッ!」
舞はそばにあったクッションを投げ付けた。
そのクッションから逃げる様に透はドアを閉めた。
舞は立ち上がりドアのそばに落ちたクッションを拾い耳を澄ませた。
少ししてから水の音が聞こえ始めた。
透がシャワーに入ったことを確かめ、ゆっくりと動き出した。
舞は透の携帯を開けた。
幾つかの画面を開けたが、これと言って得る情報はない。
舞は携帯を元の場所に置くと、カウンターに置かれたパソコンに電源を入れた。
けれど、パソコンからも何も得ることがない。
「まっいっか…。」
舞は全て元通りにすると、ソファーに座った。
舞は何もない空間をただ、ボーッと見つめた。
程なくして透は髪を拭きながらリビングに戻って来た。
「舞も浴びたら?」
「うん…後にする。今から家行くんでしょ?その時簡単に荷物持って来てからにするよ。」
「そっか、わかった。」
舞の母親は何のためらいもなく、快諾した。
そして、荷物の準備を始めた舞を横目に透に向き直り、丁寧に頭を下げ
「不束でまだまだ子供ですが、舞をよろしくお願いします。」と、言った。
透は母親とはこんなにも深い愛情を子供に注いでいるんだと思った。
舞の準備が終わり家を出た。
舞はキャリーケースとボストンバックを手にしていた。
透は車で来て正解だったなと、思った。
車のトランクに荷物を入れると二人は家路に着いた。
家の電話が鳴り、急いで家に戻ると受話器を上げた。
話し終え受話器を置いた母親は胸を撫で下ろした。
最近娘の様子がおかしいことに困っていたから。
けれど、深海さんの所に泊まると言った電話での舞の声は優しく幸せに満ちてる声色をしていた。
舞は透の携帯を借りて母親と叔父さんに電話をかけた。
かけ終えて携帯をカウンターに置くとソファーに座る透の隣に座り、透の身体に身を預けた。
「お母さん…なんて?」
「どうぞって。明日から夏休みだからって不良にならないでねって。」
舞は母親の冗談を笑いながら透に伝えた。
「舞…もう一度確認していい?」
「うん。」
舞は体を起こし透に向き直った。
「本当にいいんだよね?僕は君のお父さんの命を奪った男だ。それでも、僕を愛せる?」
透にとって他人を愛する事は最近まで未知の事だった。
それなのに、それに加えて殺人者…しかも肉親を殺した相手を愛するなんて…。
舞は震える透の手を包み込む様に掴んだ。
「透さん、嘘偽りなく私は貴方を愛してる。だから、もう聞かないで。」
「わかった…。」
舞の言葉で透は安堵の表情を見せた。
舞は透に近付きキスをした。
二人は何度も唇を重ねた。
確かめ合う様に何度も…。
そのまま二人は抱き合った。
それは確かめ合うよりも、深め合う様だった。
透の世界がみるみる色付く。
すっかり元に戻った透の目に映る舞は一際綺麗に感じた。
透はサイドに置かれたタオルケットを取ると舞の体に掛けた。
ソファーで二人横になるには狭く舞はその身体の殆どを透の上に横たえていた。
「重くない?」
「何が?…あぁ舞がって?全然重くないよ。一応僕は男だし、なんてことない。」
「そっか。」
「うん。」
二人は暫く黙って天井を見上げていた。
不意に舞が話し出した。
「私ね…思ったんだけどね…お父さんが会わせてくれたのかなって…。」
「えっ?」
「勝手かもしれないけど、お父さんが透さんに会わせてくれたんじゃないかなって…そうじゃなきゃこんな事有り得ないでしょ!?」
そう言って舞はふふっと笑った。
「そうなのかな…。」
「絶対そう!そう思うことにしたの!」
また舞は笑った。
「透さん…またシャツ貸して欲しい。」
「あぁ。あっそうだ、明日買い物行かない?。」
透はシャツを取り出し舞に渡した。
「買い物?」
「うん、この部屋で舞が過ごしやすい物買いに行こう。」
「いいの?」
「うん。」
舞は飛び起きた。
「じゃ部屋着と…あとはシャンプーとコンディショナーでしょ…あとドライヤーと…。」
「ドライヤー?」
「うん、透さんは拭くだけだけど、私はこの長さだよ!?」
そう言って舞は髪をなびかせた。
「で、マグカップとお箸と茶碗。あとはね…。」
「そんなにあるの?」
「あるよ!ちゃんとバイト代貯めてるもん!」
「そうじゃなくて、買う物。それに僕が買うから心配しないで。」
「ダメ!ちゃんと自分で買う!」
「でも僕が言い出した事だし…。」
「いいのいいの♪」
舞は嬉しそうに部屋中を歩き回った。
そんな舞を見て透は自然と舞に話しかけた。
「舞…一緒に暮らさないか?」
「えっ??」
急に言ってしまった自分に驚き透は慌てた。
あまりにも急な申し出をしてしまった事に後悔が押し寄せてくる。
「本当に??」
「いや、何が何でも急すぎるよな…ごめん。忘れて。」
「本気だったの?」
「いや…あっ嫌じゃなくて…その…。」
「透さん!?」
「本気だよ。本当に本気でそう思った。舞と一緒に住めたらいいなって。」
「わかった。じゃそうする。」
「えっ??でもそんな…。」
「もちろん、ずっとってわけにはいかないけど、ほら、私まだ学生だし、学校あるし。でも夏休みだけならいいかなって。明日お母さんに言ってみる。」
「じゃ僕も一緒に行くよ。」
「電話で聞こうかなって思ったんだけど…。」
「駄目だよ。ちゃんと会って許可貰わないと。」
「…わかった。」
舞は少し笑った。
透のこういった真面目な所も好きなんだと思えた。
「先にシャワー浴びるけど…?」
そう言って透は廊下に続くドアを開けた。
「うん。」
「一緒に入る?」
透は悪戯っぽく言った。
「もう…バカッ!」
舞はそばにあったクッションを投げ付けた。
そのクッションから逃げる様に透はドアを閉めた。
舞は立ち上がりドアのそばに落ちたクッションを拾い耳を澄ませた。
少ししてから水の音が聞こえ始めた。
透がシャワーに入ったことを確かめ、ゆっくりと動き出した。
舞は透の携帯を開けた。
幾つかの画面を開けたが、これと言って得る情報はない。
舞は携帯を元の場所に置くと、カウンターに置かれたパソコンに電源を入れた。
けれど、パソコンからも何も得ることがない。
「まっいっか…。」
舞は全て元通りにすると、ソファーに座った。
舞は何もない空間をただ、ボーッと見つめた。
程なくして透は髪を拭きながらリビングに戻って来た。
「舞も浴びたら?」
「うん…後にする。今から家行くんでしょ?その時簡単に荷物持って来てからにするよ。」
「そっか、わかった。」
舞の母親は何のためらいもなく、快諾した。
そして、荷物の準備を始めた舞を横目に透に向き直り、丁寧に頭を下げ
「不束でまだまだ子供ですが、舞をよろしくお願いします。」と、言った。
透は母親とはこんなにも深い愛情を子供に注いでいるんだと思った。
舞の準備が終わり家を出た。
舞はキャリーケースとボストンバックを手にしていた。
透は車で来て正解だったなと、思った。
車のトランクに荷物を入れると二人は家路に着いた。